大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

水戸地方裁判所 昭和51年(わ)290号 判決

本籍

茨城県結城郡石下町大字本豊田五二番地の二

住居

同県同郡同町大字本豊田五一番地の二

会社役員(元稲葉瓦工業経営)

稲葉昌一

昭和七年一二月一八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官中島義則出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一、三〇〇万円に処する。

右の罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、茨城県結城郡石下町大字本豊田五一番地の二において、稲葉瓦工業の名称で瓦の製造及び屋根工事を個人で営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空経費を計上する等の不正な方法で、

第一  昭和四八年分の総所得金額が三、一九一万五二五円及び分離課税の土地等の雑所得金額が三三万一、二二二円で、これに対する所得税額は一、五五五万七、二〇〇円であったのにかかわらず、昭和四九年三月一五日、所轄の同県下館市大字二木成字稲荷塚八二三番地の二所在下館税務署で、同税務署長に対し、総所得金額が三九〇万四、六六二円で、これに対する所得税額が五六万三、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右実際の所得額と申告所得額との差額に対する所得税一、四九九万三、七〇〇円をほ脱し

第二  昭和四九年分の総所得金額が六、六三八万七、三八九円及び分離課税の土地等の雑所得金額が五〇万六、三七六円で、これに対する所得税額が三、六四八万四、二〇〇円であったのにかかわらず、昭和五〇年三月一五日、前記の下館税務署で、同税務署長に対し、総所得金額が五八八万六、八一七円で、これに対する所得税額が九三万一、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右実際の所得額と申告所得額との差額に対する所得税三、五五五万三、二〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書八通

一  被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書九通

一  被告人作成の答申書一五通

一  坂入恒三郎の検察官に対する供述調書三通

一  稲葉きよ子(二通)、稲葉喜助(四通)、稲葉朝治(二通)、塚越康男、高田準三郎、谷田部京一、篠崎孝之、梅田光太郎に対する大蔵事務官の各質問てん末書

一  飯島芳男、島田栄一、島田万蔵、高橋関太郎、上田照明、磯幾男作成の簿外売上答申書

一  志賀隆律作成の雑所得(貸金利息)答申書

一  草房茂、梅田光太郎、倉田豊二(昭和五〇年九月一三日付)、塚本よしい(同月九日付)、岩瀬博、石井久夫、中山均、加藤貴久、長谷川恵三、株式会社神巣商店、林新次、鈴木謹、小野和昭、江村章、金井徳一、稲葉禮司、白石秀弘、古沢秀雄、稲葉光男、稲葉朝治(同月一九日付)、稲葉秀夫、新井一弥、安田富次郎、平田昭男、笹目宏、比毛好一、稲葉庄次、山田喜一、平塚亮、稲葉隆義、比毛治、大塚平四郎、星野仲男、秋元忠、平塚松三郎、黒田芳伸、鈴木義輝、仲沢毅、鳩三郎(二通)、細田重雄(五通)、薄田仁(同年八月二日付二通)作成の各答申書

一  飯岡三郎(二通)、稲垣孝、下館税務署長渡辺季男(二通)作成の各証明書

一  松本吉雄、野沢武司作成の供述書

一  大蔵事務官作成の棟上げ用土仕入調査書、家賃収入調査書、雑所得(貸金利息)調査書、減価償却(一般経費分)調査書、減価償却(製造原価分)調査書、不動産関係調査書、当座預金残高調整調査書、売掛金残高調査書、受取手形調査書、貸付金・借入金調査書、未成工事調査書、個人収支調査書、支払手形調査書、買掛金・未払金調査書、前受金調査書、セト瓦数量調査書、借入金残高・支払利息調査書

一  押収してある入金帳一綴(昭和五一年押第八八号の一三)、手形受払帳一冊(同号の一五)、請求書控一六冊(同号の二二)、請求書控二冊(同号の二七)、完成品明細請求書控一冊(同号の二八)、領収書控七冊(同号の三〇)、〈外〉コクヨ領収証控一冊(同号の三三)、当座小切手帳一三冊(同号の四七)、使用済普通預金通帳四冊(同号の四八)、済普通預金通帳一九冊(同号の四九)、小封筒入貸家賃貸借契約書一枚(同号の六四)印章七六個入スカーフ一袋(同号の六七)、領収書一綴(同号の七八)、資産負債残高明細一綴(同号の八七)

判示第一の事実について

一  坂入恒三郎に対する大蔵事務官の昭和五〇年七月三〇日付質問てん末書

一  大里恒男に対する大蔵事務官の質問てん末書

一  大塚長一作成の簿外売上答申書

一  秋葉覚一、森川淳市、根岸六郎、根本嘉一、岡部高雄、染谷基一、植木文夫、草間猛、草間洋三、柴崎春一、寺田収、飯塚梅、東郷武雄、塚田甲吉、豊島茂、吉田六三郎、久松晃、大塚昌男、菊地敏、光野昭雄、坂入秀雄、塚本茂一、中村正市、中川芳昌、市村正夫、酒井芙美、飯塚準、佐藤次一、吉田道三郎、東郷大次郎、広瀬英雄、鯉川福次郎、太田高義、草間伝重、対崎勝男、永田秀子、横倉昇、滝川敏、室町茂、横田忠一、室町勇、鈴木芳男、熊川守一、阿部久、倉持春代、小林正、飯塚恒夫、秋葉勇、海老原猪太郎、鈴木正雄、島田正雄、島田林、中村時次郎、小島正太郎、小島実、山中福治、高橋正男、片岡徳太郎、斉田四朗、糸沢栄、濱野賢一、高橋早苗、中村角次郎、霜田長作、松間謙、飯泉知市、山下秀夫、鈴木益夫、逆井福蔵、横島渡、川村弘、小田部満、坂本寅男、坂本岩一郎、佐藤末吉、横倉賢二郎、幡谷仙三郎、豊崎昇、坂本謹吾、塚本とよ、鈴木操、吉村律子、石塚勇雄、川端武男、久保田三喜雄、佐藤鉄雄作成の各答申書

一  谷川辰男作成の供述書

一  大蔵事務官作成の昭和四八年分売上調査書、昭和四八年分仕入調査書、昭和四八年分経費調査書、脱税額計算書の写、修正損益計算書、調査所得の証明書(損益科目)、修正貸借対照表、調査所得の証明書(貸借科目)昭和四八年分所得税の更正(査察)決議書

一  押収してある金銭出納帳一冊(昭和五一年押第八八号の一)、会計伝票二綴(同号の二)、振替伝票一綴(同号の五)、売上台帳一綴(同号の七)、仕入台帳一綴(同号の一一)、手形受払帳一冊(同号の一四)、給料明細表一綴(同号の一九)、請求書控七冊(同号の二一)、領収書控七冊(同号の三一)、納品書綴一二綴(同号の四〇)、請求書綴一二綴(同号の四一)、領収書綴一二綴(同号の四二)、当座小切手帳一一冊(同号の四六)、中封筒入不動産契約証書等一綴(同号の五四)、宝石鑑別書保証書三枚(同号の七四)、領収書(控)一冊(同号の八〇)、仕入先別仕入明細一綴(同号の八三)精算表一枚(同号の八五)、売掛金残高明細一綴(同号の八八)、四八年分決算資料綴一枚(同号の九一)

判示第二の事実について

一  坂入恒三郎に対する大蔵事務官の昭和五〇年七月二九日付質問てん末書

一  木村又二郎作成の簿外売上答申書

一  塚本喜一作成の簿外入金(相殺)答申書

一  目黒武夫、中川延四郎、稲葉朝治(昭和五〇年一一月二七日付)、飯泉盛一、青木岩吉、小川豊、高橋豊吉岡田好郎、坂入栄次郎、岡田久永、島田万蔵、岡田忠夫、久保田義男、宮本健之助、板倉近雄、渡辺渡、浜野美喜男、又来末蔵、高野茂、横島守、入江栄助、堀越岩三郎、稲葉邑一、市村芳一、岡田菊次、斉藤忠蔵、直江秋次郎、高野茂、鴻ノ巣武雄、鴻巣義夫、染谷しん、谷田貝平治、長雄義光、小沢良雄、柳生貞治、佐野一郎、中島和夫、小島静夫、飯岡要三、川田武、坂下一幸、中島恒男、飯島良助、青山宏、高野仁三、中村竹一、高橋義家、矢田貝重一、対崎広夫、飯海徳雄、倉田英男、倉持忠治、飯沼喜一、野沢義雄、大貫勉、須賀勘右エ門、萩原正吉、吉原末吉、倉持省三、萩原文江作成の各答申書

一  野村貞博、国府田文也作成の供述書

一  大蔵事務官作成の昭和四九年分売上調査書、雑収入調査書、昭和四九年分仕入調査書、昭和四九年分経費調査書、脱税額計算書の写、修正損益計算書、調査所得の説明書(貸借科目)、修正貸借対照表、調査所得の説明書(損益科目)、昭和四九年分所得税の更正(査察)決議書

一  押収してある金銭出納帳一綴(昭和五一年押第八八号の二)、会計伝票一綴(同号の四)、振替伝票一綴(同号の六)、売上台帳一綴(同号の八)、売上台帳一綴(同号の九)、売上台帳一綴(同号の一〇)、仕入台帳一綴(同号の一二)、給与明細表一綴(同号の二〇)、〈外〉請求書控一冊(同号の二四)、専務車中請求書控一冊(同号の二五)、請求書控五冊(同号の二六)、領収書控一四冊(同号の三二)、〈外〉コクヨ領収証控一冊(同号の三四)、領収証控一冊(同号の三五)、〈外〉コクヨ領収証控一冊(同号の三六)、四九年度不動産申告明細綴一綴(同号の三九)、納品書綴一二綴(同号の四三)、請求書綴一二綴(同号の四四)、領収書綴一二綴(同号の四五)、済普通預金通帳一冊(同号の六六)、領収証二枚(同号の六八)、領収証一枚(同号の六九)、守谷商会発行見積書一枚(同号の七一)、済普通預金通帳一冊(同号の七二)、領収証綴一綴(同号の七九)、四九年分現金売上明細表一枚(同号の八一)、売上高明細一綴(同号の八二)、仕入先別仕入明細一綴(同号の八四)、精算表一枚(同号の八六)、現金収支表一枚(同号の八九)、振替伝票集計表一枚(同号の九〇)、四九年分決算資料綴一綴(同号の九二)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法第二三八条に該当するところ、情状により懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期、罰金刑については同法第四八条第二項により右各罪所定の罰金の合算額の各範囲内で主文第一項のとおり量刑処断し、右の罰金を完納することができないときは、同法第一八条により主文第二項のように被告人を労役場に留置し、なお諸般の情状を考慮して同法第二五条第一項を適用して主文第三項のように右懲役刑の執行を猶予することとする。

(裁判官 草野安次)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例